1. 前年比を見る前に、試算表の「締まり方」を確認する
月次の数字を比較するには、まず何月分までの取引が入っているかを確かめます。売上の計上、仕入や外注費、給与、社会保険料、減価償却費などの反映時期が月ごとに違うと、見かけの利益が大きく動くことがあります。まだ届いていない請求書や、翌月にまとめて計上する費用がないかも確認します。
比較の基準は目的に合わせます。予算と比べれば計画との差、前月と比べれば直近の動き、前年同月と比べれば季節性を含む変化が見えます。どれか一つだけを「正解」にせず、業種の季節性や休業日、決算月、臨時取引を横にメモします。
2. 売上が増えても利益が減るときは、粗利から分ける
次の数字は説明用の架空例です。売上が増えたときは、増収額そのものより、粗利益が増えたか、固定費を吸収したかを確認します。
| 月次の数値(万円) | 2月 | 3月 | 差 | まず考える問い |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 800 | 900 | +100 | 数量・単価・商品や顧客の構成のどれが増えたか |
| 売上総利益 | 280 | 270 | −10 | 仕入・外注単価、値引き、低粗利商品の比率は変わったか |
| 粗利益率 | 35.0% | 30.0% | −5.0pt | 売上構成と原価のどちらの影響が大きいか |
| 販管費 | 220 | 255 | +35 | 採用・広告・外注など、増加した費用は何を生んだか |
| 営業利益 | 60 | 15 | −45 | 一時費用か、翌月以降も続く費用か |
この例では、売上は100万円増えた一方、粗利益は10万円減っています。増えた売上が低粗利の商品や取引先に偏った可能性、値引きがあった可能性、仕入単価が上がった可能性が考えられます。ただし、この表だけでは原因は確定できません。
次に売上明細を商品・顧客・拠点などの単位に分け、数量と単価を確認します。原価明細、仕入価格、値引き、外注費を照合して、どの要因が粗利益率を動かしたかを見ます。販管費は増額だけで判断せず、何のための支出か、効果が出るまでの期間、継続の有無を確認します。
3. 利益の表だけで終わらせず、現金の動きを重ねる
利益が出ていても、売掛金の回収前に仕入や給与を支払えば現金は減ります。在庫の積み増し、設備購入、税金、借入元金の返済も、損益計算書の利益と現預金残高がずれる理由です。逆に、借入実行で現預金が増えても、本業の利益が改善したことにはなりません。
| 損益で見えた変化 | 合わせて確認するもの | 経営判断につなぐ問い |
|---|---|---|
| 売上が増えた | 売掛金の月末残高・回収予定・滞留 | 増収分はいつ現金になるか。回収条件は変わったか |
| 仕入・外注費が増えた | 在庫、仕入先別単価、買掛金・支払予定 | 販売のための先行仕入か、滞留在庫か。支払いは何月か |
| 利益が出た | 現預金、税金、借入返済、設備投資 | 返済・納税後に残る現金は、次の月も足りるか |
| 借入金が増えた | 借入実行額、返済予定、資金使途 | 何に使い、効果と返済をどの数字で追うか |
資金が不安な場合は、試算表から利益だけを読むのではなく、入金予定・支払予定・返済予定を月ごとに並べます。中小企業庁の月次管理表も、財務状況だけでなく資金繰り、経営課題、対応策、今後の見通しをまとめる構成です。会社の規模や取引に合う様式を使い、予測と実績の違いを毎月更新します。
4. 差額を「確認資料・担当・期限」に変える
数字の変化を見つけたら、いきなり削減や追加投資を決めず、事実確認の手順を置きます。たとえば、広告費が増えて営業利益が下がった場合は、広告媒体・期間別の金額、問合せ数、成約数、粗利益をつなげます。売上だけでなく、回収まで含めて支出の効果を見ます。
- 差を特定する:どの月のどの項目が、比較基準からいくら動いたか記録する。
- 明細を選ぶ:売上台帳、仕入明細、給与・外注一覧、請求・回収予定など原因を確かめる資料を決める。
- 事実と仮説を分ける:試算表で確認できた事実と、担当者への確認が必要な説明を別に書く。
- 次の一手を決める:担当者・期限・確認する数字を決め、実施後に同じ指標を比較する。
「広告費が増えたので減らす」より、「4月末までに媒体別の成約粗利を確認し、採算が合わない枠の継続を再検討する」のほうが、次に何をするかが明確です。見直しの結果、売上や利益に反映されるまで時間がかかる場合は、実施時期も記録します。
5. 公式資料と関連ガイド
中小企業庁は月次管理の参考様式として、財務状況、資金繰り、経営課題、対応策、今後の見通しを記入する月次管理表を公開しています。制度利用を検討する場合は、対象要件や様式の適用条件を公式ページで確認してください。
中小企業庁「経営状況の変化の予兆を早期に把握する制度等」 · 月次管理表(参考様式・PDF) · J-Net21「月次決算の考え方と導入方法」
本記事の架空数値は読み方を説明するための例です。特定の会社の業績評価、融資可否、税務判断を示すものではありません。会計処理や制度の最新条件は、顧問の公認会計士・税理士、金融機関、制度の公式窓口に確認してください。